【富山大学事件】令和元年行政書士試験の問26は没問〜判例から考察〜

受験生のみなさんこんにちは!行政書士見習いブロガーのめーこです。
引き続き疑惑の令和元年の行政書士試験問題の解説をしていきます。
今回のテーマは行政法の問26です!

その他の没問については過去記事をご確認ください。
問28
問36
問56
問26は行政法の試験でありながら、憲法の判例知識が問われる問題となりました!
設問形式はア〜エの記述のうち妥当なものを選ぶという設問でした。
このうち、「エ」の記述が波紋を呼んでいます。
早速問題を見てみましょう。
令和元年 行政書士試験 問26
問26 国公立学校をめぐる行政法上の問題に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組み合わせはどれか。
行政法の設問で、憲法でAAランクの判例が出る、という珍しい光景となりました。
疑惑のエと合わせて、他の記述も一つ一つ確認していきます。
記述 ア

ア 公立高等専門学校の 校長が生徒に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかの判断 は、校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきものであり、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては、 校長と同一の立場に立って 当該処分をすべきであったかどうか等について 判断 し、その結果と当該処分等を比較してその適否、軽重等を論ずべきである。
→これもAA判例の神戸高専剣道実技拒否事件(H8.3.8)からの出題で、不正解の×の記述になります。
前半の「校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきもの」という記述は正しいですが、後半に不適当な点があります。
たとえば校長と同一の立場に立って判断するとしたら、いつでも校長が判断した結果がそのまま正しいことになってしまいますよね?
公平な裁判所は必要なくなってしまいます。
したがって、裁判所がその処分の適否を審査するにあたっては校長と同じ立場に立つ必要はありません。
*行政裁量について詳しくはこちらもご覧ください。覊束処分との比較が判例毎に記載されています!
記述 イ

イ 公立中学校教員を同一市内の他の中学校に転任させる処分は仮にそれが被処分者の法律上の地位に何ら不利益な変更を及ぼすものではないとしても、その名誉につき重大な損害が生じる恐れがある場合は、そのことを理由に当該処分の取り消しを求める法律上の利益が認められる。
→これは、転任処分取消事件(S55.3.25)の判例です。
中々ここまで準備していた受験生は少ないのでは?
本文では、「原判決のいう名誉の侵害は、事実上の不利益であつて、本件転任処分の直接の法的効果ということはできない。」と述べられており、この選択肢は×となります。
記述 ウ

ウ 公立学校の儀式的行事における教育公務員としての職務の遂行の在り方に関し校長が教職員に対してする職務命令は、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。
→こちらも憲法でAA判例の君が代起立斉唱拒否事件の判例です。
「本件職務命令は、特定の思想を持つことを強制したり、これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく、特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。本件職務命令は、これらの観点において、個人の思想及び良心の自由を直ちに制約するものと認めることはできないというべきである。」
というのが憲法で問われる知識ですが、今回は行政法。
本件の校長先生からの職務命令が抗告訴訟である行政処分の対象であるかについての問題でありました。
今回は、校長が行政庁からの通達によって教職員に職務命令を出しております。
いわゆる通達は行政内部を統括するものであるため、行政処分にはあたりません。
したがって正しい記述となり、○となります。
記述 エ

エ 国公立大学が専攻科修了の認定をしないことは、一般市民としての学生が国立大学の利用を拒否することにほかならず、一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであるから、専攻科修了の認定、不認定に関する争いは司法審査の対象となる。
→一見、勉強された方なら分かるとおり、専攻科修了の認定、不認定に関する争いは裁量権の逸脱や濫用が見られる場合は司法審査の対象となり、正解肢○のようにみえます。
しかし、ちょっとだけ「?」となるところがありませんか?
〜一般市民としての学生が国立大学の利用を拒否することにほかならず〜
そう、この文言です。
これ、学生が国公立大学の利用を拒否していることになりませんか?
最高裁の判決理由は以下のとおりです。
「実質的にみて、一般市民としての学生の国公立大学の利用を拒否することにほかならないものというべく、その意味において、学生が一般市民として有する公の施設を利用する権利を侵害するものであると解するのが、相当である。」が判決理由です。
(裁判所ホームページより)
上記の判決理由からも確認できるように「学生が」ではなく「学生の」が正しい記述となっています。
この助詞の使い方で、混乱した受験生も多いのではないでしょうか。
結局のところ正解は?没問?
選択肢を見てみると、今回大手予備校は各社揃って5のウとエが妥当であり正解と発表しています。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・ウ
4 イ・エ
5 ウ・エ
しかし、もし今回のエが妥当でないとみなされれば正解肢がなくなり、没問となることも予想されます。
合否を分ける一問になる可能性も高いです。
試験センターへ問い合わせることで動いてもらえる可能性も高いでしょう!また、予備校を利用された方は、予備校から試験センターに連絡してもらうのも一つの手です!

まとめ
- 行政法で憲法の判例が問われ、混乱した受験生も多い問題であった
- 記述のエは学生「が」ではなく、学生「の」であるべき
- 記述のエが不適切だと認められれば、没問になる可能性が高い
- 試験センターへの問い合わせ以外に、予備校各社からプッシュしてもらう方法もあり
日本語の解釈によって考え方が違うのかもしれませんが、問題26のエは没問ではないでしょうか?
小峯さん、コメントありがとうございます。
私もこの問題に関しては没問だと考えています。
記載した判決理由からも確認できるように「学生が」ではなく「学生の」が正しい記述となっています。
この助詞の使い方で、間違った選択肢を選んだ人も多いのではないかと思います。
しかしながら、この問題に関する声は大きくないようでまだ没問発表はないのが現状です。より多くの受験生が声を上げることで、もっと大きな動きが生まれると思います!